7月26日の(MIKI)へ
 今年もみきちゃんのお誕生日がやって来ました。これまで忘れずに憶えて来られたことがとても嬉しい。内緒だけど、今朝はあなたのためにおしゃれをしました(照)。私はね、これだけで幸せな気分になれるのよ。よっぽどの馬鹿か、あなたという人がどれだけ偉大か分かるでしょう?
 現実の日常生活にも、二度とは撮れない写真とか、復元できないデータとか、失ってしまえばもう取り戻せないものは無数にあるけれど、いい事も悪い事も確かにあったのに、時と共に忘れてしまうことで永久に消え去るのが想い出なの。そして或る時から私には、生身のあなたよりも大切なもの。更新? リセット? するものですか。あなたが落っことした分も拾い集めて大切に抱えていくわ。だけどね、あなたはやさしい人だったから、いっぱいあって独りでは持ちきれないほどよ。
 何度お誕生日を迎えても、私たちはずっと十六歳のまま。そんなに困った顔をしないの。大事な人が今この時を幸せに生きていないなら、終わりなき悲しみなど何の意味もない。それにあなたのことはちゃんと笑顔で見送ってあげたじゃない。傲慢ではなく、愚かな駆け引きでもない。あの夜の未来のあなたがうんと幸せになればいい。それが本当に愛される人の真の特権よ。私だけの想い出のあなたはきっと何処かで死んじゃったの。これからもこの世には存在しない人だと思って生きていく。
 それじゃあ分かったら今日は三度、西に向かって手を合わせなさいね。お祝いにロウソクタワーから無限のパワーを送ってあげるから!
 
 みきちゃん、みきちゃん、大好きだよ。あなたが死んでも私が死んでも忘れない。ただそれだけの愛をあなたへ。毎年顔を見て言えたらどんなにかよかったけど、あのね、お誕生日おめでとう。


               よう


あなたが気付いてくれますように

訪れ去りゆく人々に倣ってまた一葉
願いをかけてはポケットの小石で留めたつもりでも

此処は誰かの哀しみが
今夜も解き放たれて舞い上がる

吹き付ける淋しい風に磔られ
終いに飛ばされたのもあるけれど

ちぎれて旗めく紙切れは時空を超えた魂が
終の住処の故郷へ還り来る日の道標

愛しい日々の想い出と生きたままの感情を
独り文字に起こせば涙が流れて流されて

昔むかしある処の泣き虫だったヘンゼルは
大事な人が迷わぬように小石を落として歩いたの

越えられない時と涙の川底を月がやさしく照らす頃
夜ごと願いを刻まれて飛石は仄かに白く浮かび上がる

ある日遠い処から夏少年がやって来て
想い出を拾い集めるように伝い飛び
果敢にも隔てた時間の流れを渡るのよ

微かに心地好い懐かしさに導かれ此方の岸へ着いたなら
濃い霧が立ち込める記憶の森を辿っていらっしゃい


   あなたへの想い涸れることのない
      湧き水のほとりにて
      
        2022 7/26














             
     
              










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