ある時あなたは無限の夢と愛を秘め、まだ新しかったのに綺麗な持ち主さんに捨てられちゃったの。もう要らないから。捨てるぐらいなら、私にくれたらよかったのに。私なら、まず心の解れを糸で丁寧に縫いつけて、涙が乾くまでお日さまにあてるでしょ、そうしていい具合にふかふかになったらパンパン叩いて埃をはらって、それからひざの上でそっとたたんであげるのに。
ところで今はどうなってる? まあ、アイロンがけまで? とっても熱そうね。大切にしてもらって何よりだわ。それとももしかして洗いざらし? あははは、超高級品なのにずいぶん強くなったでしょうね! だけどくれぐれも色褪せには気をつけて。あれは何色だったかしら? 本物ってね、積もった枯れ葉に埋もれたって簡単に見つけ出せる。あなたのことよ。だって人を導くような輝きを放つ、とっても不思議な色をしていたから。
2021 5/28