私たちが敬愛するリッチー・ブラックモアの話です。ブラックモアズ・ナイトの曲に『Now and Then』という、ちょっとだけ切ない曲があります。少し前の私なら、お気に入りには加えずに飛ばしてしまったかも知れません。もしもあなたが聴いたなら、遠い日の私を思い出してくれるでしょうか。
二人がまだ友だちだった頃、レインボーのフィルムコンサートに連れて行ってくれましたね。格好いいボーカルのジョーが大好きだったのに、声域が狭いだの、ポップ過ぎてだめだなんて、あなたはたいそう不満げだったのを覚えています。
あれからずいぶん時が流れました。波瀾万丈のギタリストも人生の穏やかな局面を迎え、リッチーが奏でる音色はますます心に染み渡りますね。私たちと同じようにお歳を召されましたが、彼が弾き、愛する奥様が歌って、今でも美しい音楽をひとりぼっちの私に届けてくれています。彼の音は新鮮でも懐かしく、常にあなたとセットの想い出です。もっとも芸術を単なる感傷の道具にさせないあなたなら、リッチーにも言いたいことがありそうだけれども?
あなたが初めてアルバムをダビングしてくれたテープはレインボーのセカンドだった。もちろん大切に持っています。あなたの写真はないけれど。送ってくれた手紙さえ今では原子に還元してしまった。だけどこれは嘘。本当はね、何処かにしまってあるはず。きっと目にも触れない手さえ届かないところ。いつか探してみようかな? やっぱりやめとくわ。あなたはこのままがいい。それよりカセットレーベルに描かれたリッチーの似顔絵、笑っちゃうよ。私の方が絵は上手い。
2021 1/4